2009年10月7日水曜日

ベンヤミンと天使、小林秀雄と自然

10月某日

今日発売の『SPA!』を立ち読みしてツボフク対談を読んでいると、ヴァルター・ベンヤミンのナントカカントカが好きなんだと坪内祐三が発言していた。

帰宅してから早速ベンヤミンの文庫本をめくってみる。「天使」が廃墟を見下ろすとか、映画がどうのこうのと言っていたなと思い出していると、みつけた。

「歴史の概念について」というエッセイ集のなかの一節。「新しい天使」というパウル・クレーの絵画をベンヤミンが解読している文章だ。(『ベンヤミン・コレクションⅠ』ちくま学芸文庫)

(天使は)顔を過去の方に向けている。私たちの眼には出来事の連鎖が立ち現れてくるところに、彼はただひとつの破局だけを見るのだ。(中略)(だが)嵐が彼を、背を向けている未来の方へ引き留めがたく押し流してゆき、その間にも彼の眼前では、瓦礫の山が積み上がって天にも届かんばかりである。私たちが進歩と呼んでいるもの、それがこの嵐なのだ。(浅井健二郎訳)

翻訳もすばらしいが、ベンヤミンの言葉もとても意味ありげである。坪内祐三は都心の上空からの眺めと、この天使の視線を比較していた。

クレーの「新しい天使」も見てみたいと思ってネットを探すとウィキペディアにあった。想像していたのと全然違った。


ベンヤミンの想像力がものすごいのか、もっと深い背景があるのか。

同日

オスカー・ワイルドについての新刊本がでるらしいというので、一応チェック。

グレース宮田『オスカー・ワイルドに学ぶ 人生の教訓』

タイトルにはすごくガッカリだ。教訓だなんて、ビジネス書みたいじゃないか。

でも、担当編集者なる人の「小林秀雄『近代絵画』という本がある。初めて読んだのは26年も昔のことだが、「自然は芸術を模倣する」というオスカー・ワイルドの言葉のレトリックについて考察したくだりがあった」という言葉に愕然としてしまった。そんな面白そうな考察が『近代絵画』にあったなんて。

早速書棚からひっぱりだして探してみたけれど、見つからない。「自然」と「芸術」についてワイルドを持ち出しながら小林秀雄が書いていたとすれば、もっと昔に読んでおくべきだった。ベンヤミンのエッセイと同じように、もっと時間のあるうちに読むべきであった。