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2012年11月21日水曜日

美術展 2013年 = 今年の見どころ


リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝

開催期間 : 2012年10月3日 - 12月23日

開催地  : 国立新美術館、六本木、東京

開場時間 : 10:00 - 18:00 (金曜日は20:00まで)

公式サイト : リヒテンシュタイン展 東京

高知展

開催期間 : 2013年1月5日 - 3月7日
開催地 : 高知県立美術館

京都展

開催期間 : 2013年3月19日 - 6月9日
開催地  : 京都市美術館


ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア

開催期間 : 2013年3月9日 - 4月21日

開催地  : Bunkamuraザ・ミュージアム、渋谷、東京

開場時間 : 10:00 - 19:00 (金・土曜日は21:00まで)

公式サイト : ルーベンス展 東京

北九州展

開催期間 : 2013年4月28日 - 6月16日
開催地  : 北九州市立美術館

新潟展

開催期間 : 2013年6月29日 - 8月11日
開催地  : 新潟県立近代美術館


ミュシャ財団秘蔵 ミュシャ展-パリの夢 モラヴィアの祈り

開催期間 : 2013年3月9日 - 5月19日

開催地  : 森アーツセンターギャラリー、六本木、東京

開場時間 : 10:00 - 20:00 (火曜日は17:00まで)

公式サイト : ミュシャ展 東京

新潟展

開催期間 : 2013年6月1日 - 8月11日
開催地  : 新潟県立万代島美術館

松山展

開催期間 : 2013年10月26日 - 2014年1月5日
開催地  : 愛媛県美術館

仙台展

開催期間 : 2014年1月18日 - 3月23日
開催地  : 宮城県美術館

札幌展

開催期間 : 2014年4月5日 - 6月15日
開催地  : 北海道立近代美術館






2012年11月17日土曜日

ジャンルはバラバラ、本もいろいろ。ついでに人間もバラバラ

11月某日

原点に返って最近読んだ本について。

今年の6月からぼちぼち読み始めていた名著をようやく読了。だが・・・。


『チャタレイ夫人の恋人』で知られるD・H・ロレンス(1885-1930)が最晩年にキリスト教批判を展開した本。ロレンスは一流の文学者であるのはもちろんだが、実は批評・評論も数多く手がけており、歴史書も書いた。本書は、幼いころからキリスト教の厳格な家庭に育ったロレンスが、その生涯と自分が生きた時代を猛烈に悪罵する自己批判の書でもある。

この『黙示録論』は最近ちくま学芸文庫に収録されたもので、実際に私が読んだのは現在は絶版の中公文庫版。タイトルも『現代人は愛しうるか  黙示録論』といい、訳者の福田恆存が原題の「黙示録論」では意味がわからないだろうからこのタイトルをつけたという訳書で、初刊は戦後まもなくのことである。ちくま版は同じ訳書をタイトルを変えて刊行している。

ではなぜ福田恆存はこの「黙示録論」を「現代人は愛しうるか」と読みかえたのか。それこそまさにロレンスの云いたかったことであり、本書のクライマックスである。

ロレンスはクライマックスでこう叫んでいる。

近代の私たちは、キリスト教の(とくにその聖書の)掲げる理念によって、互いに譲り合い、助け合い、理解し合うことが、つまり愛し合うことができないのだ。――

いやキリスト教こそ人々の愛を説いているのでは? と誰でも思う。隣人を愛せ、敵を愛せと繰り返す聖書は理想的な教えではないのかと。聖書の教えを実践できない人間の弱さこそ、問題なのではないか。……

しかし、キリストの云うように行動することが、卑屈な精神から自由でない人間に本当に可能であるのかとロレンスは問う。

確かに人がひとりでいるときには普段より高みに立って考えることはできるだろう。だが、人がふたり以上集まればそこには必ず優劣の意識がうまれ、権力が働く。相手を賞賛する言葉の裏にも、避けがたくそれを否定する言葉を精神に同居させ、精神上の権力者であろうとするのが人間だ。つまり、人はキリストにはなることはできない。精神の貴族になることは、人が集団で生きる以上、どだい不可能なことなのである。

であるとすれば、貴族的精神の不可能性を逆説的に知らしめる聖書こそ、人と人とを和解させることを妨害している最大の原因であると云えるのであって、聖書がありうべくもない理想を説くことさえしなければ、そのほうが、実は人は理解し合えるのではないか。理想があるから人は苦しむのだ。

その聖書の欺瞞性を自ら明らかにしているものこそ、黙示録と呼ばれる新約聖書の一書である。

(以下、続く。)


新潮社
発売日:2012-01-20



文藝春秋
発売日:2012-08-03


講談社
発売日:2012-08-02

「カラマーゾフの兄弟」の続編を謳った小説であるが、駄作。「書かれざる続編をいまこそ完成させよう」という著者の意気込みだけが勇ましく(しかも、本の扉に自分の写真を使うだろうか?それを最初に見て嫌な予感がしたものだが)、仕上がった作品はとても一流とは云えない。

ミステリとしての面白みはあるかもしれない。最後の50ページほどはちょっとスリリングであったから。だが、「人物」があまりに貧相で、こんな薄っぺらな言動をする人たちだったろうかと「カラマーゾフ」の愛読者たちは皆呆れただろう。

もっとも、「妹」のほうの登場人物たちのほうがよりリアルであるかもしれない。「兄弟」でそうであるような、人があんなに長広舌を振るうことはありえないからだ。だが、それと同時に、「カラマーゾフ」の面白さは死んでしまう。

岩波書店
発売日:2001-04-20



福田和也が絶賛していたので読んだが駄作。章ごとに語り手が異なるのに、語り口がほとんど同じでは冷めてしまう。

この本を読んで家族の有難味がわかったという感想を述べる人がいるが、そんな読後感を得られる力は持っていない。ただただ異質で非現実的な家族がそこにあるだけである。分厚いのに読んで損しました。

2012年11月5日月曜日

絵は箱によって感動に差がでるらしい
  -大エルミタージュ美術館展/東京・京都

10月某日

東京・名古屋から巡回してきた「大エルミタージュ美術館展 京都」。その開催後最初の週末に行ってみた。

公式サイト : 大エルミタージュ美術館展 
東京展 4/25-7/16 ☆
名古屋展 7/28-9/30
京都展 10/10-12/6 ★

といってもこの美術展は初めてではなく、6月、東京まで出向いてベルリン国立美術館展とあわせて観にいったから二度目である。

ベルリン展の記事は
〔 真珠の首飾りの少女 - ベルリン国立美術館展 〕

というわけで、同じ美術展を別の美術館でたのしんだお話。

大エルミタージュ美術館展 世紀の顔 西欧絵画の400年

6月のときのことをふりかえれば、とりあえず午前中はベルリン展(国立西洋美術館)に行くことに決めていて、午後はどの美術館を闊歩するかは当日まで未定だった。そして、西美の館内においてあったチラシをいくつか見比べて選んだのがエルミタージュ展。

   「大エルミタージュ美術館展 東京展」 表

   「大エルミタージュ美術館展 東京展」 裏

東京展のチラシは見開きタイプ。京都は通常のA4で1枚。

   「大エルミタージュ美術館展 京都展」 表のみ

大きなポイントとなったのは、国立新美術館(新美)で開催されていることと、マティスがあるということ。新美もマティスも初めてなのだ。

マティスについては後で書くとして、新美は、完成したころは東京近辺にいたから足を運ぶことはできたはずなのに、当時は美術に関心がなく結局行かずじまい。あのガラス張りの、クネクネした建物が噂になっているのはもちろん知っていたけど、趣味の悪そうな感じがしたし、身近な文筆家の評判が悪かったせいもあるだろう。

   国立新美術館 / クネクネ

当日はカメラを忘れたので写真はなし。痛恨の失敗である。なので、上も含めて、8月に行ったときに撮った写真をかわりに掲載。(そのときは午前中に「具体展」を観にいった。ゴミみたいだった。感想はそのうちまとめたい。)

だが、実際に新美に入ってみたら意外にも(中は)よかった。

   屋内から外を / 3階までの吹き抜け

   高いところが苦手な人にはエスカレーターがまず危険

基本的には、ガラスと打ちっぱなしのコンクリート、それに木目の床板で構成される開放的な空間。

なかでも外光の射し込み具合がなかなかのもの。

   1階のカフェ / 「具体展」が不人気だったためかガラガラ

このあたりの無骨な構造も外のクネクネとは違って良い感じ。

  2階のサロン・ド・テ ロンド(カフェ)へ続く通路を1階から

さて、絵画である。

「西洋絵画の400年」というサブタイトルがあるように、西暦1500年頃から1900年頃までを視野に入れて、ルネサンス、バロックからロマン主義、印象派、ピカソまでと、とても幅広い作品が集められた。

エルミタージュ美術館はロシアの女帝エカテリーナ二世(在位1762-96年)が所有美術品を飾るために建てた宮殿がその始まりで、6つの建物に現在約300万点の作品を所蔵しているという。今回はその中からほんのわずか、89点の作品が日本にやってきたわけだ。

にもかかわらず、作品のレベルは低すぎた。素人が云うのもなんだが、傑作が集められたとはお世辞にも云えない。


(執筆中)

   京都市美術館 / 雨はかろうじて降っていない

   「大エルミタージュ美術館展」カタログ 2012年 2500円