6月22日
ようやくにして坪内祐三『慶応三年生まれ七人の旋毛曲がり』を読了。連載を途中で終えたことについて本人は「飽きたから」と書いているが、読むほうもときどき飽きてしまった。明治時代の文学に特別な関心がないと少しきついところがあると思う。文学史、広く云って歴史本というのは、読者に飽きさせないのも大変なのだなと思うと同時に、いちいち引用しないけれど、本書は振り返れば十分読み応えのある内容であったのは明言しておこう。
なぜか気になって内田魯庵のナントカという短文を読む。明治20年頃から執筆時の明治45年までの間に、文学の地位がどう変わったか、文学者の意識はいかに「進歩」したかの話。明治時代の前半は江戸時代の空気を引きずって文学は余興にすぎなかったものの、坪内逍遥をはじめとした文学者の努力によって明治末年にはその地位も向上し、社会に認められるようになった(それは文学者自身が文学で身をたてることができるようになったということ)。けれども、まだまだ足りない、もっと権威が認められなければならないと魯庵は云う。
事実、大正、昭和と文学者の地位は高くなるばかりであった(ピークはどの時点だろう?)。が、文学の存在理由がそれに反比例して消失していったのも事実ではないか。いやもっとも、いったい文学の存在理由なんて、そもそもあったのだろうか。なんてことを思いつつ、魯庵の文章がとてもよかったと最後に。
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