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2011年8月2日火曜日

江藤淳と福田恆存

8月某日

順序を少し間違えた。辰野隆を本格的に(つまり拾い読みでなく)読むまえに坪内祐三『後ろ向きで前へ進む』(晶文社)をまず読んだのだった。

小谷野敦が云うように、坪内祐三のこの著書には江藤淳の言語空間問題(=GHQ検閲)に批判的な文が掲載されている。戦後数年の占領期にGHQが行なった検閲を丹念に調べ上げた江藤淳の仕事にたいし、当時の批評家たちは冷淡だった。有名なのが福田恆存による揶揄であった。その揶揄(というよりある種の姿勢)を紹介しているのがこの文である。

今回ひさしぶりに読んでみたが、あの江藤淳を客観視できる人がいたのだというのは今からは信じられない事実だ。

死後なら、なんとでも云える。どれだけ的外れなことを書いても本人から罵倒されることはないし、的確な批判を投げかけたとしてもそれを相対化しうる反論が本人の口から直接語られる可能性は(江藤淳の場合は特に)高い。

だが、この福田恆存の批判は江藤淳がバリバリ活動している最中に、本人に見える形でなされたものである。しかも内容はいちいちもっともだ(当時、占領下では検閲は誰でも知っていたということ、知りたければわざわざアメリカに行かずとも私に聞きに来ればいいだけのこと、なのにそうしたのは立場が重くなるにつれ身動きが取れなくなってきた自分の「勇気」を改めて世間に示すためだったのではないか、検閲と憲法が戦後文学を拘束しているという理屈は「思いつき」にすぎないだろう。・・・・)。

疲れたので続きは今度。

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