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2012年4月1日日曜日

フェルメールの「地理学者」 - 豊田市美術館

8月某日

すっかりメモするのを忘れていたが、昨年(2011年)の8月に愛知県豊田市まで絵を観に行った。片道3時間、高速で。

フェルメールからのラブレター展が開催されているちょうど同じころ、別のフェルメール作品が豊田市美術館で展示されていると知って、急遽、車をくりだした。

ちょっと無理しすぎかとも思ったが、結果的には観に行ってよかった美術展だった。

豊田市美術館

駐車場についたのは正午ころ。駐車場は無料だったが、豊田市美術館はそこから急斜面の坂をのぼってたどり着くような場所にある。

この坂を写真に撮らねばならない。そう思ってカメラを取り出したが、あっさりと地面に落下させてしまった。

背面の液晶が割れた。電源は入るしレンズも伸びたので使えそうだけれど、ファインダーのないデジカメなのでちゃんと写るのかどうかわからない。で、試しに撮ってみたのが次の写真。

   豊田市美術館への坂

不思議なボケ具合だ。

坂を登りきると、巨大な美術館が見えてきた。とてもお金のかかっていそうな建物で、至極、殺風景である。

   豊田市美術館

他の地方自治体が羨むほどの豪華な建物だといっていいだろう。やはりトヨタの支援があったのだろうか。

フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展

さて、絵である。

美術展のタイトルは「フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展」。ドイツのフランクフルト市にあるシュテーデル美術館の所蔵作品を集めた特別展だ。

美術ビギナーには「フランドル」が何なのか、「地理学者」とフランドル絵画は一緒なのか違うのか、よくわからなかったが、とにかくフェルメールの作品が「ある」ということで観に行ってみたわけである。

フェルメールは1点しか展示されないけれど全体の作品数は多くて、カタログの掲載数を基準にすれば95点にのぼる(カタログに掲載されていても実際には諸事情により展示されないこともあるから、単純にカタログ数では云えない)。実感としては他の展覧会よりかなり多く感じたが(すべて観るだけでかなり疲れた)、平均80点とすれば若干多めだったくらいか。

さて、入館早々、目当てのフェルメールへ。

夏休みの平日だったから若干多めぐらいの人の入りで、結構すんなり絵の目の前に立つことができた。飾られていたのは「地理学者」。

   フェルメール / 地理学者

(半年も前のことなのでだいぶ忘れたが)結構な大きさのある絵、というのが第一印象。

京都市美術館とは違い、至近距離で観ることができたのは幸運。ほんの1メートル、というか50センチくらいの間近まで接近で来た。絵の細部まで見つめることができた。

だだ、館内があまりに明るすぎた。部屋全面の白い壁が光を反射させ、その光が作品を前から横から後ろから包み込み、絵をじっくり観たいのに壁が気になって仕方がない。絵の趣きや静けさ、暗さまでもが等質化されてしまう。なぜ、壁の色を暗い、落ち着きのあるものにしなかったのか(先日リニューアルオープンしたオルセー美術館も、壁の色を暗い色に変更したことを最大のポイントとしていた)。

建物がそうであるように、これが現代の「粋」とでも云うのだろうか。無機質性や清潔感、建築の論理で絵を弄ばないでもらいたい。

それはともかく、実物の「地理学者」は間近で観ても遠くから観ても、とても美しい絵にみえた。というのは、無駄がないのだ。

机に布や道具、地図が置いてあり、奥の壁には絵や棚、地球儀があってごちゃごちゃしているようだが、実際はがっちりとまとまった、シンプルな構図であるように思った。それほど目立たず、主張もしない。部屋に飾るには最適な絵だと思う。

点描が印象的だった。布の縁や光のあたるところの随所にポチッと白い点が置かれている。現実にはそんな光り方はしないわけだから、主観的なものだろう。つまり印象派がそうであったように。

また、この絵の人物にはモデルとされる人がいる。

アントニ・ファン・レーウェンフックがその人で、以前書いたエントリー「フェルメールのデッサン」で紹介したが、フェルメールと親交があった生物学者。顕微鏡による生物観察を行なった初めての人である。

フェルメールはカメラの原型となったカメラ・オブスクーラを使用して絵を描いたらしく、フェルメールの絵の独特な立体感はその効果だと云われており、オブスクーラを知ったきっかけはレーウェンフックだったのではないかというのが福岡伸一教授の仮説。

いまとなっては個人的にはどうでもいい話だが、そんな逸話もあるのだった。

(つづく)

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展覧会名:
  フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展

期間:
2011念3月3日 - 5月22日, Tokyo
2011年6月11日 - 8月28日, Toyota

場所:
Bunkamura ザ・ミュージアム, 渋谷, Tokyo
豊田市美術館, Toyota

主な作品:
フェルメール / 地理学者
テル・ボルフ / ワイングラスを持つ婦人
ヘリット・ダウ / 夕食の食卓を片づける女性

公式サイト:
フェルメール《地理学者》とオランダ・フランドル絵画展 ※消滅
豊田市美術館
中京テレビ

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