9月某日
待望のマウリッツハイス美術館展(神戸市立博物館)。
公式サイト : 神戸市立博物館 / マウリッツハイス美術館展
すでに8月半ば、東京のほうで観てきたため順番は前後するが、神戸のほうを先にまとめる。
9月29日開催の翌日に行ってみた。開催当初は込むだろうと思ったので10月に入ってからで十分と考えていたが、偶然にも台風が日本を直撃することとなり、「しめた。ガラガラに違いない」と急遽、神戸まで行くことにした。
高速もガラガラだったので30分ほどで到着(時刻は正午)。近くの駐車場(1日最大1500円)に車を停めて外にでたらものすごい強風だ。傘をさしてもあっという間に壊れて役に立たなかったけど、まだ小雨だったため少し濡れただけで済んだのは幸いだった(帰りはずぶ濡れ)。
神戸市立博物館 / 最寄り駅は三宮駅
見てのとおり誰も並んではおらず、すんなりチケットを買って中に入れた。
マウリッツハイス美術館展 オランダ・フランドル絵画の至宝
現バージョンのチラシ
旧バージョンのチラシ
東京都美術館バージョンのチラシ
※※※ 以下は入場後の屋内。1階は撮影可 ※※※
1階ロビーのボード / いわゆる撮影スポット
チケットを切ってもらって中に入ると1階ロビーに入場待ちの列を制御する柵が用意してあったが、人がまばらなため使われることはなく、そのまま中央に置かれてあった。(館内に入場後にも絵のブースに入場するための列ができるということらしい。)
1階ロビー / 奥のミュージアムショップは博物館常設のもの
順序としては3階が最初のブースなので3階まではエレベーターで上る。(現在は違って、まず2階までロビー中央の階段を使い、3階へは、奥にある階段をさらにのぼって行く。1階ロビーで規制されていなければ、1階からエレベーターを利用して一気に3階に行ったほうがかなり楽である。別に怒られません。)その階には風景画・歴史画の部屋があって、それらをぐるりと一周してから2階へは螺旋階段で降りる。2階の最初はフェルメール「真珠の耳飾りの少女」専用のブースで、奥に行けば肖像画、静物画、風俗画の各ブースがある。
館内で配られる案内図 / 今回はひとり1枚のみ
最後のブースをでるとショップがあって、その出口から階段を降りて1階に戻ることになるが、これは最初に入場してきたロビーと同じところなので、そこから何度も3階に行って絵の前に戻ることができる。つまり、東京都美術館でもそうだったけど、ショップに入っても美術展の「出口」とはならない。ショップから直接ブースまで戻ることさえできてしまう。これは結構嬉しい(京都市美術館・兵庫県立美術館は不可能)。
上が2階の特別展ミュージアムショップ / 階段で1階に戻ることに
美術展のボードの左にあるのは、「耳飾り」の額だけを用意したもので額の裏側に立って絵のように写真も撮れるという気配り。大人も子どもも大喜びの気配りだ。
肝心の美術展の感想だが、東京で2回も観ているので改めての特別の感慨はなし。東京については改めて書く予定。
ちょっとだけ鑑賞案内
ひとつ、「真珠の耳飾りの少女」のブースについては書いておこう。
部屋の広さは東京都美術館のそれと比べてひと回りかふた回り小さめで、また都美と同じく左側が最前列で観るための列をつくる柵が設けられ、こちら側では列に並べば絵の一番前で観ることができるが立ち止まることはできない。一方の右側には、一歩か二歩下がった距離で観るためのスペースがあって、そこは時間規制なしで存分に堪能できる。絵まで2メートルくらいだろうか。
個人的には右側のじっくり絵を観られるスペースがお勧め。少し遠いとは云え、「少女」と真正面で対面できる機会は貴重である。左側に並んで絵の前を通り過ぎたところであまり意味はない。昔、東京でドラクロアの「民衆を率いる自由の女神」を同じように歩きながら眺めさせられたが、あんな惨めなものはなかった。
ところで、絵は額縁自体のガラスに加えて、ガラスをはめ込んだ壁の向こう側に絵が飾ってあるため、どのような観方にせよ、位置からは結構距離があると感じられる。
そこでお勧めは単眼鏡。
私はKenko製の単眼鏡(リアルスコープ8×20)を使っているが、これがあれば絵の細部まで観ることができて、このような展示がされる絵を堪能するにはとても便利な道具だ。「真珠の耳飾り」の光沢はもちろん、「少女」の唇の照かり具合もはっきりわかる(絵の傷も見えたりする)。
Kenko リアルスコープ 8X20
また、「耳飾り」以外のブースにはソファが結構用意されているため、座りながら絵を鑑賞することも可能なので便利かもしれない。
ひとつ心配なのは、「耳飾り」のブースだけでなく、チケット窓口に並ぶスペースや1階ロビーの広さがあまりないこと。そのため、これから観客が増えればかなり窮屈な感じになると思われる。都美とは違って、行列が屋外に及ぶことが予想されるから、その点は注意したほうがいいかもしれない。(だから台風直撃の日に行ったのはかなり正解だったと思うのだった。)
「マウリッツハイス美術館展」カタログ 2012年 2000円
都美で購入したものだから何度も読んでて、くたびれている
カタログ(図録)は安めのお値段だが、クオリティもそれなりに低い(ペラペラだし読み応えがあまりない。なにより翻訳がちょっと下手)。ベルリン展のそれのほうがずっと作りもよくて内容充実だったので(2500円)、値段が安ければいいというものではないね。
ひとつだけお気に入りの絵を
テル・ボルフ / 手紙を書く女 1655年
フェルメールより15歳年上のテル・ボルフが以前から気にいっていて、一見地味なこの絵を強く推したいのは私だけだろうか。
〔 フェルメールからのラブレター展 〕で初めてテル・ボルフの存在(とその作品)を知って以来、彼の絵をひそかに探している。
この「手紙を書く女」の女性はとても美人であるとは云えないけれど、丸顔や髪型など、どこか愛くるしさを感じる人である。背景は薄暗く手を抜いているような気もするが、それがかえって女性そのものを演出し、特に上着の華やかな色が背景と好対照をなしている。それがまた美しいのだ。
なかでも女性の耳のところにある青いリボンと真珠は、暗い展示室ではとても気づきにくいのだが、細かすぎるほどの筆致で描かれており、小さくてかわいらしさ抜群である。カンバスのほぼ中央に置かれたそれらが、この絵の最大の魅力だろう。
会場ではほとんどの人が素通りするこの「手紙を書く女」、ぜひとも立ち止まってじっくり眺めてほしい。
10月某日 別の日の混雑状況
10月7日(日)、はやくも二回目のマウリッツハイス美術館展。
大阪から神戸方面への阪神高速が結構込んでいて、前回の倍くらいの時間がかかった。
午前10時半頃に現地に着くと博物館の外に列ができており、10人ほど並んでいた。これはチケットを購入するための列で、館内のスペースが狭いため外にはみ出るわけだが、実際には窓口から20~30人ほどの人数でしかないのでそれほど待つわけではない。
チケット購入後に入場しても、上記の1階ロビーの規制線は使われておらず、すんなりエレベーターで3階までたどり着けた(午後は違っていたのだが、それは後述)。
だが一歩、展示室に入るとものすごい込み具合だった。それぞれの絵の前には10人ぐらいが集まっており、歩くスペースもかなり窮屈。会場が狭いため、これくらいの人数でも相当な混雑振りだ。
絵を最前列で見るためには5分、10分は並ばなくてはならないだろう。環境としてはかなり厳しいものがある。
2階の「耳飾り」のブースは当然のことながら人で溢れている。多すぎるため、3階から2階へ降りる螺旋階段の手前で入場規制が敷かれるほどである。だが、溢れているのは、左側の、「耳飾り」を直近で観るための行列のほうで、右側の、立ち止まって観ることができるスペースには5人くらいしかいない。多少離れていても、じっくり眺めることができる右側のほうがいいと思うのだが・・・。
さて、すべての絵を観終わったところで1階に戻ると、ロビーには規制線が活用されて行列ができていた。昼の12時すぎだったと思う。展示室への入場規制が始まったらしい。
さらに、エレベーターで3階に行く人がいないような気がする。どうやら、1階から3階までは、階段でのぼるように指示されているようだ。(さらに後日行ったときに確認したところ、1階からショップへの階段をあがってショップと反対側に進んだ先にある階段で3階に向かう順路になっていた。でも、規制されていなければエレベーターを使って3階に行ったほうがはるかに楽。)
土日に行く場合は、朝一よりも昼前後よりも、おそらく夕方がいいのだと思われる。開館時間が7時まで延長される土日の午後5時くらいに到着すると、きっと快適に観られるだろう。次回はそうしよう。
11月某日 さらに別の日の混雑状況
そういうわけでさらにもう一回、美術展に行ってみた。
曜日は日曜、時間は午後5時入館。(土日は午後7時まで)
天気が悪かったためかもしれないが(雨上がり)、もちろん並ぶ必要はなくスムーズに中に入ることができ、しかも館内はガラガラといっていいくらいである。
それぞれの絵の前には1~2人、「少女」の前だって5人程度。絵の独占も可能だ。
しかし、ゆっくり絵を眺めて改めて思ったが、照明がよろしくない。額縁のガラスに光が反射することがときどきあり、通常の高さでもそうなのだから、子どもだと反射する角度からみるため満足に絵をみることもできないだろう。
そんなこんなで閉館まで残り30分くらいになると、おそらく館内には10人くらいしかいない。おそろしく開放的だ。東京の様子を知っているだけに、独り占めしていいのだろうかと申し訳なくなるくらい。
人がいないのでふと感じたが、かなり暗めの照明なので明るい色調の絵よりも暗闇をベースとした絵の部分的な光がよく目立って、よりいっそう雰囲気がでる。たとえばレンブラントの「シメオンの賛歌」など、じっとみつづけると絵の場面のその中にいるかのように感じてしまう。
レンブラント・ファン・レイン / シメオンの賛歌 1631年
ということで、日曜の午後5時がおすすめである。
午後5時の京都市立博物館
1月某日 閉幕直前の様子
最後のフェルメールと思い定めて、1月3日、神戸まで。
閉館前の2時間を楽しめれば十分だろうと、午後3時半に到着(平日は5時半まで、土日は7時まで)。
ところが博物館の外にまで行列ができていた。人数は100~200人程度。博物館を半周まわるかたちで人が並んでいる。
誘導の人によれば、チケット購入までの待ち時間は30分程とのことだが(実際は20分くらいだった)、閉館まであまり時間がないのにこの混雑では、昼間はもっと大変だったはず。やはり駆け込みは多かったようだ。
だがこの「30分」が曲者で、あくまで館内入口のチケット購入までの時間なのである。購入後、チケットを受付で切ってもらってからさらに並ぶのだ。これが長い……。
1階のロビーだけでは収まりきれない行列は、1階の各展示室をヘビのようにウネウネさまよってあらゆるルートを確保して、ようやく尻尾(頭?)までたどりつく。ここで30分以上を消化してしまう。つまり、合計1時間、待つことになったわけだ。
館内に入れば寒さは感じないが、外で30分以上待つとなるとかなり厳しいものがあるだろう。
ただ、外ではチケットを購入するために並ぶのであって、すでにチケットを持っていればここで並ぶ必要はない。そのまま館内の受付まで直行できる。今、コンビニなどでチケットを買うことができるのかどうかしらないが、チケット自体にこだわりがないのであれば、まえもってどこかで買ってから博物館に行ったほうがいい。
さて、館内も相当に混んでいる。こういうときは観るのを諦めるのが一番。閉館30分前までじっくり待って、人が少なくなるのを期待する。
そして予想通り、閉館まであと30分を切ると当初から4分の1以下の人数に落ち着いて、かなり贅沢に一枚一枚の絵を観ることができるようになった。
今日は、あまりの混雑ぶりに、急遽閉館を30分延長するという措置がとられたため、これも幸運だった。
観覧ルートの最初に戻れば、もう新たに人は入ってこないのだから当たり前なのだが、誰一人いない状況である。入館時の状況が嘘のようである。30分もあれば、お気に入りの絵に絞れば、十分に独占状態で絵を楽しむことができる。
そうして、ルーベンスやレンブラント、テル・ボルフ、そして「真珠の耳飾りの少女」をじっくり観てしまった。「少女」の絵の前にはさすがに1人だけということはないが、3人くらいいてもいいではないか。譲り合って、真正面から、対面したのだった。
もう6回も観ているので実際は感動はないけど、それでも「少女」と一対一で向かい合えば、「少女」の病的な白い肌に吸い取られそうになって、赤いくちびるに惑わされそうになって、しまうのである。
でも、今日の収穫はレンブラントの「自画像」だった。
(随時、更新中)
素敵なレポートですね。
返信削除しかも、知りたい事がほぼ網羅されていて助かります。
こちらは螺旋階段なので、トローニーの間から、風景の間に直接戻れる・・ということでしょうか。都美は昇りのエスカレーターだったので・・・。
私も上野にも行って、明日神戸に行く積りです。
本当にどうもありがとうございます。
ありがとうございます
削除螺旋階段は逆送可能です。また、ショップを出て階段を降りると1階ロビーですが、この階段も逆送可能で、さらに1階ロビーから何度もエレベーターで3階の展示室に行くことができます(1階から2階のトローニーの部屋まで直接エレベーターで行けるような気もします)
都美はエスカレーターでしたね。実はエレベーターで上下自由に移動することができましたが
エレベーター!そうですよね。頭にないと目に入らないんです。
削除昨日、神戸展に行って来ました。平日なので空いていましたが、それでも時折ツアーの団体が入ると、列が「ブース」からはみ出しそうに・・・。仰る通りゆとりがないので、混むとスタッフが苦労しそうです。
昨日は、le-moraliste様のお蔭で、すんなり鑑賞できました。私も、さっさと上げようと思います。もしかしたら、様子が知りたくて懸命に探している誰かの役に立てるかも知れないので。
ツアー客が結構来ていますね。団体がいない時間は結構快適に観られました。都美とは違っておしゃべりする人が多いかなという印象はありましたが(それはそれでいいと思います)
削除レポートを書かれたら、よろしければご紹介ください