2012年4月15日日曜日

坪内祐三と福田和也の新刊3冊と印象派

4月某日

紀伊国屋書店に久しぶりに寄って、なにか新刊は出ていないかと棚をザザッと眺める。

まっさきに向かった文芸書コーナーに坪内祐三の新刊を発見。『文藝綺譚』(扶桑社)だった。

坪内 祐三
扶桑社
発売日:2012-04-14

少し立ち読みしてみると、雑誌『en-taxi』連載のエッセイ(批評)をまとめたもののようで、同誌からは『アメリカ』『風景十二』に続く単行本化だ。

その二冊はもちろん読んでいるので、今回も購入。

帰宅後に少し読んでみたが、連載中に読んだものもあり(例えば「第一夜 パーティー」)、つい読みふけってしまう。

「あとがき」によれば、タイトルの「文藝綺譚」は「ぶんげいきたん」ではなく「ぶんげいきだん」と読む、という。有名な永井荷風の「濹東綺譚」も、よく間違えられるが「ぼくとうきたん」ではなく「ぼくとうきだん」と読むらしい。私も間違っていた。

ところで「パーティー」だが、冒頭に川村二郎と出会う場面がある。野間文芸賞の受賞パーティーが開かれた夜のことで、川村二郎は選考委員の一人なのだ。

ここで整理しようと思う。いつも混同してしまうのだが、川村二郎と川本三郎は別人であり、しかも川村二郎は著述家で二人いるということだ。

ここに登場する川村二郎はドイツ文学者・文芸評論家で、日本芸術院会員もつとめた御大である。受賞パーティーの翌年、2008年に亡くなった。

もう一人の川村二郎は朝日新聞の編集委員のあと、文筆家としてフリーに。白洲正子の伝記も書いているが、基本的に文章術的な本を書く人。まったく自分には関係なさそうだ。

そして、川本三郎は、同じく朝日新聞を退職後、さまざまな著作のある評論家。「東京」や「荷風」についての本が多く、たぶん、私も(一部)読んだことがある。坪内祐三がよく名前をだすのは、この川本三郎のはずだ(『東京人』の編集委員をつとめたことがある、ということとは関係ないだろう)。

川本三郎が世間を騒がせたのは、指名手配犯のお手伝いをしてバレて有罪判決を受けた事件だろう。そのせいで朝日新聞を退職したのだが、その後の活躍は評価が高い。

ようやく三人の区別ができた。

この新刊のふたつ隣に、福田和也の新刊もあった。『村上春樹12の長編小説』(廣済堂出版)WEBサイトで連載していたエッセイ(批評)の単行本化である。

福田 和也
廣済堂出版
発売日:2012-03-14

同じサイトで連載していたものとして坪内祐三の『父系図』(廣済堂出版)があるが、これはちょうど今日読み終わったところ。そのサイトはちょくちょく見ていたから、福田和也のこの連載も少しだけ読んでいて、単行本化を待っていたから購入。

あいかわらず「あとがき」がないが、最終章「1Q84」は書き下ろしということでよしとしよう。この本は当面、積読だ。

もうひとつ、本屋の新刊コーナーにチラッと目をやったときに見つけたのが福田和也の岸信介の伝記。これは待ちに待った単行本化である。

福田 和也
扶桑社
発売日:2012-04-07

あいかわらず「あとがき」がなく、でも最終章の後編は書き下ろしだ。これも、しばらく積読だ。

もうひとつ、新書も一冊購入した。

島田紀夫『セーヌで生まれた印象派の名画』(小学館101ビジュアル新書)

このシリーズは(というより、第一弾の高階秀爾が)よかったので新刊がでればチェックするのだが(といいつつこの本がでたのは半年前)、この島田紀夫という人の名は美術展カタログで見たことがあるし、印象派ということもあるのですぐに読んでみたい。

島田紀夫について少し調べてみると、印象派だけではなく、アルフォンソ・ミュシャについての著作がある。そうか、ミュシャのカタログで見たのかもしれない(実際そうだった)。

※大阪府堺市にある「アルフォンソ・ミュシャ館」訪問記

そんなこんなで、しめて6,615円也。まぁまぁの買い物だった。



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