2012年3月3日土曜日

リアル天皇論-橋本明『平成皇室論』

12月某日

古本屋で手に入れたまま積読されていた橋本明『平成皇室論』(朝日新聞出版)を読む(といっても、読んだのは12月)。

平成皇室論 次の御代へむけて
平成皇室論 次の御代へむけて

本書の内容は、今上の皇太子時代から現在までの歩みを丹念に追った伝記という側面と、現今にあって天皇とはいかにあるべきかという現代天皇論という側面があり、その両面をうまくまとめて書かれている。ひとえに、著者の眼の良さ、つまり批評眼の確かさが本書の信頼性を担保しており、なかなか読み応えがある。

とくに印象的だったものを紹介すれば、戦後の皇室にあって「皇太子妃」「皇后」の立場の難しさについて詳しく書かれている。それはつまり、美智子皇后がいかに苦労してきたかということだ。

美智子皇后は入内以来、旧皇族・旧華族から猛烈な批判ないし苛めを受けた。平民出身がなぜ皇室に、しかも皇太子妃におさまるなんて・・・という人間特有の感覚=階級意識である。厳しい立場に置かれた美智子妃に手をさしのべることができるのは、皇太子しかいない。いや、絶対に認められなくてはならないというご自身の努力しか、それらの声を消すことはできなかった。その努力のすさまじさは、なまなかに表現できるものではないだろう。現在、誰にも皇后として受け入れられている結果がただ、それを示唆するだけだ。(それはもちろん、雅子妃のふがいなさを逆照射することになってしまうのだが。)

意外だったのは(よくよく考えれば意外でも何でもないのだが)、三島由紀夫が皇太子同妃時代の両陛下と直接歓談したことがあり、だがその後、三島は両殿下の批判を展開したのだという。皇室の神聖を信じる三島は週刊誌などで両殿下の姿が派手に紹介されることに苛立ちをみせた。昭和天皇の非人間性を尊び、両殿下の普通の人間性に不安を覚えたのだ。三島のみならず、その批判には村松剛や黛敏郎なども加わっていた。

両陛下は皇太子同妃の時代、保守派とされる人々からも批判を受けていたのだった。美智子妃と結婚した頃、皇太子を知る旧友たちから皇太子の頼りなさを心配する声があがっていたという話は聞いたことがある。皇太子が美智子妃にべた惚れだったからだ。

(つづく、かも)

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