7月某日
このあいだついに手に入れた辰野隆『忘れ得ぬ人々』(講談社文芸文庫)を読む。
辰野隆の名を知ったのは坪内祐三の『文学を探せ』(文藝春秋)で、このエッセイ集のなかに出口裕弘『辰野隆 日仏の円形広場』(新潮社)を紹介する一文があり、とても印象的だったので辰野隆(たかし、ではなく、ゆたか、と読む)の名前は強く頭に刻まれていた。
また別の本かなにかを読んでいるときに辰野金吾という名前もときどきみるようになった。坪内祐三の本でも触れられていたが、金吾は隆の父であり、日本人初の東大建築学科教授なのだ。だから、建築関係の本を読んでいると、しばしば辰野金吾の名前が目に入ってくるのである。辰野金吾は東京駅の設計をしたことでよく知られている。
辰野隆の本を手に入れたのだから、つぎは出口氏の本を探さなければならない。坪内祐三のエッセイを読んでからもう10年になるだろうか。それで意を決して出口裕弘の本をアマゾンで検索にかけたら「品切れ」だという。なんてこった。
でもひとり、出口本にひとつだけコメントが書き込まれていた。評価自体はイマイチだったようだが、書いた人に仰天。小谷野敦だっだのだ。こんなのところに小谷野敦が。評価は5段階で3。まあ普通である。
この小谷野敦、アマゾンのレビューを膨大に書いていることがわかった。ときには自作にもコメントするお遊びをしつつも、何百冊もの本のレビューをかいているようだ(そんな暇がよくあるなと思う)。なお、小谷野が自作コメントをした本というのは『名前とは何か』で、これは結構面白い本で、いまだに私の机の上の積読タワーの一部となっている。
どんな本にコメントしたのだろうと遡って読んでいったら、坪内祐三『後ろ向きで前へ進む』(晶文社)がでてきた。この本には坪内祐三による江藤淳批判が掲載されている、とコメントしてあった。
『後ろ向き』は読んだことがあるので、あ、あれのことかと思い、本棚からひっぱりだしてくる。
あけてみると坪内祐三のサイン入りだ。日付は2002年10月1日とある。トークショーにでも参加したときのものだろう。で、これをさっそくこれから読む予定。
つまり、坪内祐三ではじまった話が、ふたたび坪内祐三のところに戻ってきたというわけである。
さて、次はどこにいくのだろうか。
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