ラベル 将棋 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 将棋 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2011年3月19日土曜日

羽生の苛立ちと山崎のふがいなさ

3月某日

うわさを聞いて紀伊国屋書店で買ってきた梅田望夫『どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?』と阿久津主税の将棋の本を読む。

どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語
どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語

将棋のチカラ
将棋のチカラ



阿久津七段のほうは里見女流名人インタビューがおもしろかったけど、他はイマイチ。

梅田さんのほうは、山崎七段のインタビューをまっさきに読む。羽生とのタイトル戦で惨敗した山崎七段の声がおもしろいと評判なのだ。

まずは話題になった、山崎の突然の投了に羽生が叱責したというエピソード。全文を書き起こしてみよう。

 それから9手進んだ局面。羽生は23分の考慮で▲7一角と飛車取りに角を打った(局後の感想によれば、羽生はこの局面はまだ形勢不明と考え、将棋がまだまだ長く続くものと思っていた)。一分将棋の山崎も、羽生の長考中に態勢を立て直せたかに見えた。しかし将棋はこの10分後にあわただしく終わってしまったのだ。山崎の突然の投了の意思表示に対して、羽生は身体をびくんと震わせ、

「おっ」

と声を上げた。突然の投了に心から驚いている様子だ。そしてすぐに山崎に向かって、この将棋は難解なまままだまだ続くはずであったろう、そして自分のほうの形勢が少し悪かったという意味のことを、かなり強い口調で指摘した。山崎もすぐさま言葉を返したが、羽生の口調と表情は厳しいままだった。

数分後に関係者が大挙して入室したときには、穏やかないつもの羽生に戻っていたが、盤側で一部始終を観ていた私は、終局直後の羽生のあまりの険しさに圧倒される思いだった。羽生には勝利を喜ぶ、あるいは勝利に安堵するといった雰囲気は微塵もなく、がっかりしたように、いやもっと言えば、怒っているようにも見えたからだ。

羽生の見込みでは投了の局面以降も「長い将棋」が続くはずだった。しかし一方の山崎は、両者一分将棋となってしまってからも「長い将棋」を延々と指し続けて、羽生相手に勝つ自信がなかった。ある一手の読みに穴があったことに愕然としていたのである。それが突然の投了の理由だったという。

(再構成中)

羽生は「好きなおもちゃが取り上げられた」ように不満な表情をみせた。そのような棋士は、現在、若手にもたくさんいるのではないか。そんな棋士の将棋をもっとみたい。

山崎との対局ではいつも、山崎が不出来な将棋をさしてしまったときには羽生は怒ったような感じになるという。それは、羽生さんが山崎七段の力を、将棋を、楽しみにしているがゆえのことだね。

だからというわけではないが、山崎七段には、一度でもいいから、大爆発してほしい。つまり、タイトルをとってほしい。その姿がみたい。

(24.11.2.追記中)

2009年8月21日金曜日

編集者の役割、という大げさなものではないけど


8月某日

前々からなにかと話題になっていた渡辺明竜王の『永世竜王への軌跡』を購入。指し手解説はすべてすっとばして、対局こぼれ話を次々と読んでいく。

メインを読まずにいちゃもんをつけるのは筋が違っているが、ともかく出来がよろしくない。周囲や関係者の評判は高いらしいけれど、なんといっても文章が下手なのである。もちろん作家ではないのだからそれは大目にみて読むことはできるが、この本にはわざわざ「構成」者として特別に別の人の名前があげられているのだから、とても不満なのである。プロの作家ではないからこそ、チェックが行き届かなければならないはずだ。

うまい文章、読みやすい文章というのは、読み手が次に知りたいと瞬間的に思ったことを、書き手がまさしくその直後に書いているものである(本当にそうなのである。結論をはやくばらせというわけではない)。あるいは、理解にあたって本来書くべき文章の要素を一切欠落させない文章というのが優れた文章である(晦渋とかそういう問題ではない)。つまりこの2点において、本書は幼稚であると云わねばならない。それは原則的に、編集者の、この場合は「構成」者の責任にある。渡辺竜王のサービスの良さが面白いし棋譜解説も結構充実しているように思われるだけに、そこがあまりに残念でならない。

とここまで書いておきながら、確認のためあらためてページをめくってみるとそれほど読みづらくはなかった。最初字面を追ったときにの印象が強すぎたのかもしれない。そのとき、こう思ったのは事実ではある。