2011年4月10日日曜日

世間の「風潮」に抗えた唯一の政治家、斉藤隆夫

4月某日

月に15回くらいは本屋に通ってその度に1冊は本を買って帰る。けれどその日はめぼしいものがなく、それでも1冊も買わずに本屋をでるのはどこか後ろめたさもあり、ふだんはあまり注目しない特設コーナーを見ていたら、復刊された中公文庫が並んでいた。その中に、斉藤隆夫の名前があったので、思わず手が伸びる。斉藤隆夫『回顧七十年』である。こんな貴重な本を買わずにはいられない。早速購入する。で、少し読み始めた。

個人的には、斉藤隆夫は日本近代が生んだひとつの成果だと考えている。組織や風潮に惑わされず、政治学の要諦をおさえながら自分の信念を勇敢に主張できた数少ない日本の政治家のひとりである。

有名な昭和11年の粛軍演説、昭和15年の反軍演説は、日本の左翼が陥りがちな現実性のない批判ではなく、日本の現状を的確に捉え、正確な国際情勢分析に基づき、優れた批判的精神の表れと云えるだろう。立憲主義を理解した稀な日本人でもある。

抜本的改革や革新が叫ばれた当時にあって、そんな必要はないのであり冷静に現状の改善を進めればよいと主張できた政治家は他にひとりもいなかった。現代の政治家に彼のような演説はできはしない。なぜなら、誰もが「風潮」に踊らされているからである。

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