4月某日
紀伊国屋書店のレジに近づいたら、『scripta』という冊子が置いてあるのに気づいた。よくある書店発行の無料誌のようだ。この冊子が発行されているのははじめて知った。
とりあえずもらって目次を見ると、池内紀のトーマス・マン日記を読むエッセイが連載されていたので早速帰りに読み始めた。
イギリスに滞在していた、1940年頃のトーマス・マンの日記が引用されていて、ドイツの侵攻の様子が刻々と記録されている。でも――いちばん興味がひかれるのは、カフカの『城』をトーマス・マンが読むくだり。
当時まだ無名だったカフカ(とっくに死去)の『城』のアメリカ版を出すにあたり、出版社がトーマス・マンに序文を書くよう依頼してきたという。そこで、就寝前に『城』を読んだことが日記に書いてあるのだ。1940年6月某日。
結局、トーマス・マンは序文を書くことに決めた。面白かったからだろうか。そして、これをきっかけにカフカが知られるようになっていくのだろうか。
ゾクッとする話だ。
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