2009年8月12日水曜日

ふたたび東野圭吾


7月某日

内田魯庵『思い出す人々』を読了。早くも今年読んだ本のベストワンに並べられる一品であった。

この本の面白さのひとつに、魯庵は明治人であるのに文章がとても読みやすいことがあげられる。しかも、なかなか“若い”言葉づかいがみられることがポイントだ。ラスト・スパークだとかハイブリッドだとかラビリンスなんてカタカナ語がでてくるあたり、とても二葉亭四迷と同時代人であるようには見えないのである。

そういえばちょっと笑ってしまったエピソード(というか小さな事実)がある。本書の最後のほうで大杉栄との思い出が綴られているが、大杉栄の娘の名前がなんと「魔子」というらしい。大震災のときに殺された大杉の、なんかこう、複雑な人物像に興味を覚える。

続いて中村光夫『二葉亭四迷伝』を読み始めた。(江藤淳が指摘するように)「です・ます」調の文章には批評としての物足りなさが感じられるが、でも内容の充実さは十分。ときに踏み込みの弱さも感じられるけれど、二葉亭伝としての面白さは堪能できる。二葉亭を愛した中村光夫の(変な意味ではない)、強い思いが感じられる伝記である。

8月某日

坪内祐三・福田和也『無礼講』を読了。連載時に伝わってきたように、両者の考えの違いが徐々に表面化してきているのが注目すべきところ(坪内祐三が社会的事件の時代性を指摘するのに対し、福田和也は各事件をそういうものとしてしか受け止めない、など)。でも、よくありがちな喧嘩にならないところがふたりの大人っぷりとでも云おうか。

8月某日

東野圭吾『さまよう刃』を読了。数ヶ月ぶりの東野作品。やはりこの人の推理小説は抜群である。この小説は秋に映画化されることもあって本屋の目立つところに並べられていたから、つい手にとってレジまで持っていってしまったというわけ。読み始めると面白くて、すぐに読み終えてしまった。最後のちょっとしたひっかけ(?)も、東野作品ならではと云えるだろう。もっとも、内容自体は残酷な話である。

続けて東野の『探偵倶楽部』も読み始めた。VIP御用達の「探偵倶楽部」の活躍を描いた短編集。最後のオチには、よく考えられているなあと感心するばかりである。

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