2011年9月20日火曜日

ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 -京都市美術館

9月某日

( 前回 )

フェルメール展が50分待ちなのは、開催期間が残り1ヵ月をきってしまい宣伝回数も十分に達した時期であるため驚くことではないのだが、同じ京都市美術館のなかの反対側ブースで(1週間前の)9月13日から開催されている「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」にはまったく人が並んでいない。チケット売り場にも人のいる気配がない。

フェルメール展も1ヵ月ほど前までは入場規制がかかっていなかったのでそういうものなのかもしれない。けれど今回はサブタイトルが「印象派」なのである。

公式サイト:
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション

印象派・ポスト印象派はフェルメールほどの知名度はないかもしれないが、それでも今回展示されるルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンなどの名前はあまりに有名だ。展覧会名自体にその名前があるほうがむしろ自然で、そんな大御所が何人も集まっているのだからフェルメールに匹敵する魅力はあると思うのだが・・・。

さて、チケットを購入してさっそく中へ。ガラガラである。平日ではなく休日の午後なのに。でも観るほうからすれば、こんなにラッキーなことはない。隣の展覧会の混雑で結構疲れ気味のところ、ワクワクしながら進んで行くと、マネの「鉄道」が見えてきた(「1. 印象派登場まで」)。

マネ / 鉄道

印象派については(というか美術全般について)よく知らない私ではあるが、この「鉄道」は見覚えがある。マネ本人は印象派というよりその先駆者という位置づけらしいが、あぁこれが印象派だと思わせる絵の色合いがはっきりとわかり、それだけで興奮してしまう。

モネの「日傘をさす女性」があるなんて

ほかにコローやクールベなど名前くらいは聞いたことのある画家の作品がいくつもならび、さっきまで観ていたフェルメールの時代=17世紀とはまったく異なる画風(非常に視覚的な)がとても新鮮に感じられる。そして「2. 印象派」という次のブースに向かうと言葉にならない衝撃が・・・!

モネの「日傘をさす女性」(本展覧会では「日傘の女性、モネ夫人と息子」というタイトル)が本展のファーストメインというような位置づけで斜めの壁にかけられていたのだった。これはあまりに有名な絵だ。モネに触れたどんな本にもでてくるくらいの絵(ほぼ同様の構図の絵が複数あるが)。

モネ / 日傘をさす女性

まさかこの絵を観ることができるとは全く予想していなかったので、ほんとうに驚いた。衝撃とはこのことである。あらかじめ家で確認してきた展覧会の公式サイトにはこの絵の紹介が一切なかったのであるから、不意打ちも不意打ちだった。口をポカーンと開けてしまう。

写真でみるよりずっといい。すばらしい。うまく表現できないが、なにかこう、まさしく印象派的な、色が流れる感じが直接身体に伝わってくる。すばらしすぎる。

女性にまとわりつく光と風。光を反射し、風になびく草々。ほかのだれがこの絵を書けるだろう。

閉館まで残り30分しかない。ほかの絵もみないといけないので、しぶしぶその場を離れる。もう一度、ゆっくり時間をとって、この展覧会に来ようと思うのだった。

このブースにはほかにも、ドガの「舞台裏の踊り子」があったり(かの有名な「踊りの花形(エトワール)」ではない)、ルノワール、ピサロが飾られているが、ある絵をみて「んん?」と意識が集中する。もしかして・・・画家の名をみると、ベルト・モリゾとあった。

ベルト・モリゾがあるなんて

個人的な最大の衝撃は、(モネではなく)ベルト・モリゾの3枚の絵(すべて初見)だった。モリゾの絵もあるなんて、公式サイトにはひと言もなかった。なんということだ、公式サイト。

印象派のなかで私がもっとも気にいっているのはベルト・モリゾである。あの適当な感じが好きなのだ。

プレートにその名前をみつけたとき、「あっ」と声をあげてしまったけど、なにも申し訳ないとは思わないところに衝撃の大きさがある。数枚程度しかモリゾの絵を知らないのに、絵の印象からなんとなく画家が誰であるかわかったことも嬉しく、自分の美術レベルもあがったなとも思った(ゴッホなら誰でもわかるだろうけど、モリゾはなかなかわからないだろう)。

先に書いた通り、今回はモリゾの絵は3枚あるのだが、いずれも知っていた絵ではなかったけどそのなかで最も気にいったのは、「麦わら帽子をかぶる若い女性」だ。

ベルト・モリゾ / 麦わら帽子をかぶる若い女性

画像でみるとなんともさえない印象をうけるが、実際の絵はもっとカラフルで迫力がある(注:あとでカラフルなものをネットで見つけてきて差し替えた。この画像が実物より若干明るすぎるくらい)。流れるような(勢いのある)筆づかい、それと反対のさりげない表情。できうる限り身を乗り出して近づいてみれば、モリゾのひと筆ひと筆が手にとるようにわかる。モリゾのなかでもさほど有名な絵ではないけど、この展覧会で個人的に一番よかったのがこの「麦わら帽子をかぶる若い女性」だった。

「あと20分で閉館」のアナウンスが響く。いかん、あと2つのブースが残っている。ゴッホもまだなのだった。

( つづく )

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